田中博見×クロサカタツヤ氏対談『オープンソースハードウェアとIoT・AIの世界観』(後編)

前編に引き続き、本コラムでは株式会社ビズライト・テクノロジー代表取締役社長・田中博見と、株式会社企代表取締役社長兼株式会社ビズライト・テクノロジー外部取締役・クロサカタツヤ氏との、IoT、AI、オープンソースハードウェアについての対談の様子をお伝えします。前編ではオープンソースハードウェアのスピード感、サステナビリティな点に触れ、IoTによりもたらされる人間の気づきと、それに対しての変化について意見が交わされました。後半では、AIを中心にお送りします。

正しくIoTが機能していることにより活きるAI

前編の最後では「IoTは人に気づきを与える。見えなかったものを見えるようにするテクノロジーである」とお二人は述べました。それを受け、IoTとAIの関係性、AIと人間との関係性などについてさらにお話をしていただきました。

クロサカ「見えなかったものを見えるようにすることは、あらゆる技術要素と人間の関係というのを普通に考えていけば、辿り着くであろう結論だと思います。そこにちゃんと光を当てて仕事をしていくことが大事ですし、それがあるからこそ次のAIが初めて活きてくるはずなのです。
逆にそれがなかったらデタラメのAI……必要とされる情報が、何も投入されない、何も識別していないAIになってしまいます。やはり、AIもしばらくの間は人間のためになるAIしか意味がないはずですし、もしかすると、今後ずっとそうであるかもしれません。
だとすると、人間をどう楽しませてくれるのか、どう便利にしてくれるのか、どう楽にしてくれるのか、ということになります。IoTを利用することで、『今フードコートのあのレストラン空いているよ』『お客さんが何人いるよ』というようなことがわかるようになりました。IoTで収集できるデータは、いわば「結果」の部分です。その結果をもとに「予測」をすることで、AIに初めて付加価値が出てくるのです。

エンドユーザーである人間に対して直接的に働きかける際に、人間がそれによりどう行動を変えるかということを踏まえ、行動を変えるときにどれだけその行動変化に寄り添えるAIなのか、いいリコメンドを出せるのかが大切です。
もしかしたら、『食事がしたい』という要望に対して、『●●というレストランが空いていますよ』というリコメンドだけではなく『朝ごはんを食べてからそんなに経っていないので、食べなくてもいいのでは』というリコメンドもあるかもしれません。
このようなことをできるのがAIなので、ここまでできるかは正しい情報をAIが取得しているかに直結すると思います。それを実現するためにも、IoTがいろいろな場所で正しく機能していることが必要不可欠だと思います」

IoTとAIの関係をこのように述べるクロサカ氏は、続けてAIに対する人間の姿勢について述べました。

クロサカ「AI導入によって『成約率が何%上がった』というような数字を見ると、人間はいったい何をやっていたのだろう、と思うことがあります。人間とコンピュータが碁で対戦したとき、解説の方が、コンピュータの指し手について『意味がわからない』と言ったことがあります。意味がわからなかったのは、解説の方の美意識に合っていなかったというだけの話ではないでしょうか。いかに人間の美意識がいろいろな可能性を邪魔しているのか、それがAIの導入の弊害になっていることがあります」

インテリジェンスなセンサーの代わりとなるAI

田中「将棋の時も、そのような話はありました。通常の棋士が打たないような初手を打った……それは、AIが学習した棋譜の中にもない手でしたが、何十手か進んでいくと、最終的には定跡になるための最初の一手をやっていただけで、順番が違うだけだったのです。

ただ、最近のAIへの姿勢が良い悪いというのではなく、今のハードウェアとの組み合わせの中で考える中で、どのあたりが私たちとAIとの接点かという切り分けがようやくできつつあります。私としては、AIはインテリジェンスなセンサーの代わりという風に定義をしています。

例えば、CTスキャンをとったとき、非常に微細なガンを、AIは見つけられたのですが人間の医師は見つけられなかったという話があります。これは純粋に“センサーの戦い”なのではと思うのです。病気の人と病気じゃない人の写真をたくさんAIに取得させると、この小さいのはもしかしてガンかも、となります。人間の目のセンサーもかなり高度ではあるのですが、年齢とともに衰えてきます。AIにインテリジェンスな要素を与えることは、IoTとものすごく相性が良いです。人間の行動を変えさせるトリガーとなりえると思います」

見えなかった数字を見えるようにすることで人の行動を変える

最後に、今までの話を踏まえてビズライト・テクノロジーのこれからを聞いてみました。

クロサカ「現場にある課題に対して、技術をうまく組み合わせて、ローコストでやる……これが、ビズライトの特徴というか、生きる道でもあります。もっと個別で、もっと現場にあって、まだ気づかれていないことの気づきをどんどん見つけていく……、我々の生活や経済、仕事は劇的に変わるはずです。
まだまだ、僕ら自身が美意識にとらわれすぎていると思いますし、全然変わろうとしていないとも思います。変わる要素は山のようにありますから、あちらこちらにある余地を少しずつ掘り返すことによって、十分な仕事になっていくのではないかなと思いますし、そこにすごい意味があると感じています」

田中「我々が目指すものは、まさにそこだと思います。当社は技術の会社なので、どういう手法でやるというメソッドは、定義をしなくてはいけません。その定義の仕方は、やはりリナックスで育ってきています。ソフトウェアもよくわかっていて、それがハードウェアでも同じことが起こっているということがあります。時代の流れもありますが、大手がゴリゴリ押し込んでやれるような時代でもなくなってきていて、それぞれのコアコンピタンスの中で戦わなくてはいけなくなってきているのが現状です。それを支えるのが、オープンソースです。

ハードウェアにしてもソフトウェアにしても『私たちが開発しているのは独自のハードです』といったら、私たちには声はかからなくなります。どういう信頼設計をしているのかとなってしまいますから。逆に、『私たちがオープンソースハードウェアを信頼できる設計にして市場に出しています』となると、それがいいとなります。これに対して、どんなにすごい試験をしていますといっても、独自だとなかなか認めてもらえません。

オープンソースハードウェアは逆説的なことが起きていて、別の観点で見始める人が出始めているということは、使命感もありますし、ビジネス的にもこれが心地良いと思っている人がたくさんいるのだろうと思います。私は、オープンソースを使わなければやれないということ、オープンソースだからこそやれることがあるなと感じています」

著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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