オープンソースハードウェアでデジタルサイネージはどう変わったか

最近、街中でよく見かけるようになったデジタルサイネージ。写真や動画が次々と映し出され、何台ものデジタルサイネージが同期して映像が切り替わるようなものもあります。さらに、タッチパネルによる案内や、センサーにより人の接近を感知して内容が切り替わるものなど、今までの映像が流れているだけの広告モニターとは大きく変わり日々進化しています。

株式会社ビズライト・テクノロジーでは、Raspberry Piを搭載したIoTゲートウェイ「BHシリーズ」を用いたデジタルサイネージを提供しています。そこで今回は、デジタルサイネージの仕組みや使用例を解説するとともに、オープンソースハードウェアを使うことでデジタルサイネージはどう変わったのか、今後デジタルサイネージがどのように発展していくのか、同社代表取締役社長・田中博見氏にお聞きします。

デジタルサイネージの昔と今

デジタルサイネージは電子看板ともいわれ、屋外、屋内を問わず、ディスプレイなどのデジタル表示機器を用いて情報を発信するシステムを総称してそのように呼ばれています。ビルに取り付けられた大型のものから、カウンターに置いてある小型のものまでさまざまなサイズのものがあります。大きいものでも小さいものでも基本的な構成はあまり変わらず、ディスプレイとPCなどを使った映像やネットワークを制御する装置を持っています。また、必要に応じてスピーカーやテレビチューナーなどの各種機器も取り付けられていて、紙によるポスターと比べて貼り換える費用がかからず、多くの情報を発信することが可能です。

デジタルサイネージとしては、従来は単純に文字や写真をスライドショーで表示したり、広告用の動画を流し続けたりするだけのものが一般的でした。例えば、専用の操作盤でデータを入力して表示したり、ディスプレイに接続されたDVDプレーヤーに写真や動画の入ったディスクを入れてエンドレスで流し続けたりするものがあります。近年になると、ディスプレイの薄型化や、画像表示にPCを用いることで表現方法がいろいろと進化し、複数の画面が同期して画像が動いたり、時間帯や状況に合わせて画像を変化させたりすることが簡単にできるようになりました。従来は表示する画像のデータを入れ替えるためには、再度入力したり、ディスクを取り換えたりしなければならず、設置場所や設置数によってはかなりの手間がかかりましたが、それも一台のPCを操作することで簡単に変更できるようになりました。

そして現在では、デジタルサイネージはさらに進化して多くのことが可能になっています。今までは単に情報を表示するだけだったのが、タッチパネルや音声で双方向に情報をやりとりできるようになっています。また、各種のセンサーで、人の接近や外部の環境の変化を感知して、それに合わせて動くこともできるようになっています。さらに、ネットに接続することで得られたデータをクラウドにあげてAIで解析することも徐々に進んでいます。無線で通信することで配線の問題も解消されています。ただの情報発信のためのディスプレイだったものが、センサーであり、頭脳でもある、人に気づきを与えるIoT装置としての役目を果たすようになってきているのです。

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デジタルサイネージの利用例

1.外の環境から考えて商品を提案するデジタルサイネージ

進化するデジタルサイネージの使用例の1つめは、外部の環境やネットからの情報をもとにお客様へ最適な商品を提案する例です。大きな商業施設では、施設内の店の案内やセール情報などを発信するデジタルサイネージがさまざまな場所に設置されています。このようなデジタルサイネージでは、従来は単純に入力された情報を流すだけで、情報の変更があるたびにデータを入れ替えて対応しているだけのものでした。

これに対し、これからのデジタルサイネージでは、ネットとつながり、無線機能も備えたIoTゲートウェイが設けられています。このIoTゲートウェイには、温度、湿度、紫外線などを測定する施設の外に設置されたセンサーデバイスから各データが送られてきます。IoTゲートウェイは、これらのセンサーデバイスから送られてくるデータと、ネットから得られた気象情報から判断して、施設内の店舗で販売されている商品のオススメ情報をリアルタイムで発信していきます。

例えば、曇り空で日差しが少なく、あまり紫外線が強くないように思えるような日の場合。センサーデバイスで得た紫外線のデータから、十分に日焼けをするレベルであることをIoTゲートウェイで判断します。まずは紫外線データをディスプレイに表示することで、それを見たお客様に日傘や日焼け止めクリームが必要なことを気づかせ、購入に結び付けます。さらにIoTゲートウェイは、ネットから得られた降雨情報をもとに、現在地でしばらくしたら雨が降る可能性があることも判断します。紫外線量と降雨情報から判断して、今施設内の傘売場で購入するならば単なる日傘ではなく、晴雨兼用傘がオススメであることをディスプレイに表示します。

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このように、デジタルサイネージがさまざまな情報を判断して、自動でお客様に今一番オススメするべき商品を提案していきます。このほかにも、気温の高い日に熱中症予防のドリンクや帽子などをオススメすることや、湿度のデータから乾燥を予測して乾燥対策用のクリームをオススメするということなども可能です。今後はさらに、無線通信にサブギガ帯の通信を用いることで、通信距離を伸ばし大規模な施設でも同様のシステムを構築できます。また、タッチパネルや音声により施設内の店舗や商品の検索をできるようにするなど、お客様との相互のデータのやりとりが可能となります。センサーによりディスプレイ前を移動するお客様の情報を得ることも考えられます。それらの情報をクラウドへあげて解析することで、購買行動の要因となるものを導き出すことも可能です。デジタルサイネージがデータを得て判断し、お客様に気づきを与えることで商品購入に結びつけることができるのです。

2.お客様の困りごとを集め、案内をサポートするデジタルサイネージ

2つめは、お客様からの質問事項や要望を集めて解析し、案内窓口業務のサポートを行うデジタルサイネージです。ホテルや大きな施設では、設備の場所や各種サービスの案内を行う案内窓口が用意されています。従来、このような案内はすべて人が対応していました。

しかし、最近ではタッチパネルや音声認識を備えたデジタルサイネージにより、地図や設備にまつわるデータを表示することで簡単な案内は人の手を使わずともできるようになりました。しかし、不慣れな地でのレストランの予約や各種の細かい手続き、希望に対する相談など、人が対応しなければ難しい案内もまだ多くあります。そのため、案内窓口には事情によく精通した案内人が必要となりますが、うまく情報の共有ができないと新たな案内人がなかなか育たず人手不足になります。

そこで、デジタルサイネージをネットにつなげ、お客様が検索した場所などのデータをクラウドにあげることができるようにします。さらに、案内窓口にデータ入力と表示が行え、ネットに接続できる小型のデジタルサイネージを置くことで、窓口に来たお客様のデータと質問事項を入力し、クラウドにあげることができるようにします。クラウドにあげられたお客様の多くのデータから、年齢、性別、時間帯、天候といったさまざまなデータと、問い合わせ内容との関連をAIにより解析し、その結果をデジタルサイネージに返すことで、より細かい案内が可能となります。案内人の得た情報や経験の共有も容易になるので、次の案内が早くなりサービスの質を向上させます。デジタルサイネージが、末端のデバイスとして情報を集め、人をサポートするIoT機器となるのです。

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田中氏の語るデジタルサイネージの未来像

田中氏はデジタルサイネージの未来像についてこのように語ります。

「かつてはさまざまなフォーマットのファイルが表示できるとか、サイネージ側の処理能力を上げていくという、動きを重くするようなことが行われていた。そんな重い処理はクラウド側のサーバーでやればいい。端末側が処理できるフォーマットに変換すればいいだけで、一台一台に大きな処理能力を持たせて肥大化させる必要はない。端末側にはデバイスがつながるので、双方向に話ができる。将来的にはAIで話せる。AIで構築できるサイネージにならなくては」

進化したデジタルサイネージは、自分で判断する機能を備えています。さらに、センサーからさまざまなデータを取得する機能も備えています。サイネージの前を通るお客様の年齢、性別、人種などをセンサーや画像から判断。お客様に最適と思われる商品をオススメします。実際にお客様がその商品を購入したのならば、お客様のデータや購入時の状況を合わせてクラウドにあげてAIで解析します。購入しなかった場合も同様にデータをあげて解析します。

このような学習を繰り返すことで、どのようなお客様が、いつ、どのような状況で購入するのか精度がよくわかるようになり、それをデジタルサイネージ側に返すことで、前を通るお客様に最適な商品をオススメすることが可能となるのです。田中氏は「サイネージをサイネージだけとして見るのではなく、マクロで見た時にはそれ自身が1つのセンサーとなっている。AIの中にある神経の1つ。切れているようじゃいけない」と言います。そのうえで、田中氏はデジタルサイネージに必要な要素をこう語ります。

「あらゆるデバイスが簡単に接続できないといけない。一定のインテリジェンスを持っていて、自分で判断できないといけない。AIのパラメータを取得できるぐらいは必要。画像を表示するとか、映像を流すというのは最低限でよくて、高い処理能力は必要としない。そういうところはクラウド側でやればいい。このあたりを満たしつつ、拡張性を持っていてかつ低価格。堅牢性とセキュリティへの対応が必要。電子の看板からwithセンサーというか、withゴールというか。ミッションをもっとちゃんと背負える。背負うことができるし、背負わせる設計をしないといけない。それがデジタルサイネージの未来像だ」

ビズライト・テクノロジーの提供するインテリジェンスなデジタルサイネージの世界

このようなデジタルサイネージの世界において、株式会社ビズライト・テクノロジーでは、必要な機能と耐環境試験を行い、信頼性を持たせたArduino互換のIoT向けボード「BiZduino」と、Raspberry Pi搭載IoTゲートウェイ「BHシリーズ」を提供しています。どちらもオープンソースハードウェアであるArduino、Raspberry Piをベースとしているので、拡張性と自由度を維持。BiZduinoもBHシリーズも、耐熱、耐電、耐湿などの環境試験を繰り返し実施することで安定性や信頼性も高めてあるので、施設外の設置や長時間の動作に耐えることができる堅牢性を持っています。

BiZduinoでは、Wi-Fiモジュールとして技適認証取得済みのESP-WROOM-02を搭載し、802.11 b/g/n(2.4GHz)の無線LANに対応しています。また、BHシリーズも各種無線通信に対応しているので、BiZduinoに紫外線や温度などの各種センサーを取り付けて施設外部に置いても、IoTゲートウェイとしてのBHシリーズと無線でデータのやりとりができます。配線の心配がなく後からでも簡単に設置可能です。また、小型であるので置き場所を取らず、すでにある施設に取り付けることも容易に行えます。価格も安価であるので、多数設置する場合もコストを抑えられます。

セキュリティに関しては、BHシリーズに搭載されたRaspberry Piに採用されているARMプロセッサ(Cortex-Aファミリまたは、ARMv8-Mアーキテクチャを採用したCortex-Mプロセッサ)には、「TrustZone」と呼ばれるセキュリティ技術が使われています。TrustZoneでは、プロセッサ内に2つの環境をつくり、一方は通常のOSやプログラムなどを動かす環境とし、もう一方をセキュリティ用のOSやプログラムが動く環境として分離。通常の環境に侵入した悪意のあるプログラムが、セキュリティ用環境に格納した鍵や認証用のデータを見ることができないようにして安全性を高めています。

株式会社ビズライト・テクノロジーは、ハード、ソフト両方の面で多くの経験と実績を持ち、多くのデジタルサイネージの開発実績があります。デジタルサイネージとセンサー技術を用いたビジネスモデルの構築にも対応いたします。お気軽にご相談ください。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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