Arduino、Raspberry Piは産業用として耐えうるのか?それともただの教育用ツールなのか?

IoTデバイス向けのオープンソースのワンボードマイコンとして注目を集めている、Arduino(アルディーノ)とRaspberry Pi(ラズベリーパイ)。どちらも教育用として開発された製品ながら、その高い性能とオープンソースという“自由度”や“情報量の多さ”から産業用としての利用が期待されています。しかし、実際にArduinoやRaspberry Piといったオープンソースハードウェアを産業用として検討してみたものの、機能の不足や耐久性、信頼性への不安から使用を断念する場合が多くあります。

株式会社ビズライト・テクノロジーでは、ユーザーのオープンソースハードウェアへの不安を解消し、必要な機能と信頼性を持たせたArduino互換のIoT向けボード「BiZduino」と、Raspberry Pi搭載IoTゲートウェイ「BHシリーズ」を提供しています。オープンソースハードウェアを用いた開発は産業用ボードを用いた開発とは何が違うのか。ArduinoやRaspberry Piは産業用として耐えられるのか。オープンソースハードウェアによる開発や、ArduinoやRaspberry Piの産業用としての可能性について、同社代表取締役社長・田中博見がお話するとともに、BiZduinoとBHシリーズの使用実例を紹介していきます。

Arduino、Raspberry Piは産業用として使えるのか?

Arduinoは、学生が簡単に手に取って使える教育用の安価なマイコンボードとして、2005年にイタリアで開発されました。Atmel AVRマイクロコントローラと各種入出力ポートを備え、C言語を元としたプログラム言語による統合開発環境(IDE)が無償で用意されています。

また、Raspberry Piは2012年にイギリスで設立された非営利財団「Raspberry Pi Foundation」により子供の教育用として開発されました。電源やHDDはなく、電源はUSBポートから供給し、micro-SDをストレージとして使用します。Linuxなど、各種のOSを使用することが可能であって、HDMI出力によりフルハイビジョンの画像も流せます。GPIOによりさまざまな機器との接続も可能です。

どちらにも共通することは、オープンソースハードウェアという点。回路図や基板図などの仕様が公開されていて、互換製品を開発することが可能なだけでなく、世界中の人と開発情報を共有できるなど、柔軟な開発環境を備えています。しかし、ArduinoもRaspberry Piも教育用として開発されているので、ケースはなく、ノイズ対策などもされていません。バックアップも含め独立した電源がないため、突然の電源断によるシステムダウンの可能性があります。

また、Raspberry Piでは通常RTCを備えていないので、動作ログの取得や、タイマー動作を内部的には行えません。ArduinoもRaspberry Piも、そのままの状態では産業用として使うにはあまりにも脆弱で機能不足といえます。

不安点を解消し、産業用に耐える性能と信頼性を追加

これに対して、ビズライト・テクノロジーでは産業用として耐えうる機能を追加し、各種の試験を行うことで安定性や信頼性も高めたArduino互換のIoT向けボード「BiZduino」と、Raspberry Pi搭載IoTゲートウェイ「BHシリーズ」を提供しています。

例えばBiZduinoでは、Wi-Fiモジュールとして技適認証取得済みのESP-WROOM-02を搭載し、802.11 b/g/n(2.4GHz)の無線LANに対応。TCP/IPのプロトコルを意識することなく、ATコマンドを使って制御できます。電源部は5V端子から電源供給ができ、Wi-FiモジュールESP-WROOM-02への給電には専用回路が使われ、安定した電源供給が確保されています。また、バックアップ電池付きRTCを搭載しI2Cで制御可能ですし、Arduino互換のため、Arduino IDEからプログラムの書き込みが可能です。

そして、BHシリーズでは独自電源回路かRaspberry Piピンヘッダ経由で5Vを安定供給。ボタン電池駆動のRTCを搭載することによりオフラインでのリアルタイム管理が可能になりました。金属筐体によるケーシングとグランド処理により、サージ、静電気耐性をフィールド機器並みに強化、GPIOポートのノイズが数十mVレベルに低減されています。大容量コンデンサによる電源断対策も施され、OSを安全にシャットダウンすることが可能です。

さらに、BiZduinoもBHシリーズも、耐熱、耐電、耐湿などの環境試験を繰り返し実施することで安定性や信頼性も高めています。「長年ハードとソフトの両方のフィールドに係わってきた人間が、自分だったら採用でき、ビジネス・産業用にも耐えられる」というレベルまで機能を追加して確認しています。
まずはプロトタイプで。最終的には1000現場あるが、まずは10現場でやってみようというところでは、そのまますぐに使えるレベルに仕上げています。ハード、ソフト両方の面で多くの経験と実績を持つビズライト・テクノロジーが、拡張性と自由度を維持したまま、オープンソースハードウェアに対する不安点を解消したものがBiZduinoとBHシリーズなのです。

オープンソースハードウェアによる開発のメリット

このように、ArduinoやRaspberry Piはそのままでは産業用に耐えられず、製品として使用する場合には解消しないといけない問題がいくつもあります。しかし、このようなオープンソースハードウェアを用いた開発は、産業用ボードを用いた開発と比べて多くのメリットがあります。
一番のメリットは、Linuxのようなオープンソースのソフトウェアがそうであったように、世界中のユーザーが係わることにより、1人や1つの会社で行うのとは比べものにならない速さで多くのプロダクトが生まれ、ハードに対する情報が非常に多いこと。そして、仕様が公開されていて、自由にカスタマイズが可能であって、それを製品とすることができます。何万、何十万というエンジニアを投じて行うような開発と同じ効果を、わずかなコストと時間で得ることができるのです。

これを実際の開発手順の例を追って解説します。まず、製品に必要な機能を決定し、その製品を最初のロットでどの程度の台数を作るか検討されます。ここで、例えば3000台以下のそれほど多くはない台数での製作となった場合、回路を最初から設計して製造に入るのでは、開発費や期間が大きくなるため採算が合わなくなります。さらに1000台以下のような少量での製造となると、産業用に販売されているハードを使用した場合、どのハードを使用するかの選定、搭載するソフトの選定、カスタマイズをするための販売しているメーカーとの秘密保持契約を結ぶなど、時間や費用がかかり採算が合わなくなります。オープンソースハードウェアならば、最初から回路を設計する手間はかからず、すでに多くの情報があるので、即座にプロトタイプの開発に着手できます。これにより時間とコストが大幅に削減されます。

しかし、ArduinoやRaspberry Piのようなオープンソースハードウェアでは、必要な機能を満たすパーツを追加してプロトタイプを作るところまでは問題はありませんが、製品化となると堅牢性や信頼性などにおいて不安があり、そのままを製品化するのは問題が生じます。その点では、産業用に耐えうる機能の追加と試験を実施しているBiZduinoとBHシリーズは、そのまま製品化を行うことも可能であり、製品をいかに展開していくかというビジネスモデルの検討から販売までを短期間で完了できます。オープンソースハードウェアの拡張性と自由度も維持しているので、必要に応じてカスタマイズも短期間で可能です。

BiZduinoもBHシリーズも問題なく産業用に使えるレベルの機能追加と試験を行っているので、実用にあたっては最低限の確認をすればよく、場合によってはそのままでも使用できます。オープンソースハードウェアはそのままでは産業用に耐えられません。
オープンソースハードウェアの利用を心配している人に、そのままオープンソースハードウェアを使ったものを見せても安心はできません。ビズライトでは、BiZduino、BHシリーズにさらにカスタマイズを加えてさまざまな分野で利用した実績があります。ユーザーの不安を解消できる技術と経験を持っていると自負しています。

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導入実例から見るオープンソースのメリット

BiZduinoをベースとしたIoTアンビエントサイネージ「kizuki.」

続いて、BiZduino、BHシリーズの使用実例をいくつか紹介します。1つ目は株式会社QUANTUMのIoTアンビエントサイネージ「kizuki.」です。kizuki.はインターネットに上がる天気情報を元に、現在地の最高気温と最低気温、現時点と12時間後までの天気を、LEDの光り方により伝える小型のデジタルサイネージです。
インターネット上の天気情報はWi-Fiを経由して通信を行い取得し、データに合わせて所定のLEDを発光させているのですが、ハードの部分がArduinoベースで設計されています。

このkizuki.の開発に関しては、開発期間や費用の問題で最初の段階からオープンソースハードウェアを使用することが、ビズライト、QUANTUMとの間で共通認識としてもたれていました。そのうえでまず、BiZduinoを用いてプロトタイプの製品が組み上げられました。プロトタイプを確認したQUANTUMより、すぐにこの動作で問題ないとの回答が返ってきます。そこからは、kizuki.の機能として不要な仕様をBiZduinoから外し、kizuki.に合った一番シンプルで安価な仕様にカスタマイズされます。さらに各種の耐環境試験をビズライトにて実施し製品化となります。この間およそ1か月。非常に短期間かつローコストで開発が行われています。

オープンソースハードウェアによる開発では、すでに多くの情報があるので希望する機能を満たすことができるのか事前にユーザー側で検討することが可能です。全く何もない状態から設計を進めると、ついこの機能も追加できないかと多くを望んでしまいますが、ある程度の形があるので希望する機能を満たすことのみに注目できます。

1から作り始めると夢が広がって、「これできますか、アレできますか、これつけられますか」と仕様が何倍にも膨れ上がることがあります。オープンソースハードウェアの中でやるとなると、仕様がどんどんシンプルになってきて、機能戦争ではなく本来のIoTのビジネスモデルで戦わなくては、となります。ものすごく話がシンプルになるのです。

とはいえ、そのままのオープンソースハードウェアでは産業用としての信頼性に欠けます。プロトタイプまでは早くできても製品化の段階で時間やコストがかかり断念する場合がまだ多くあります。その動作は誰が保証してくれるのか? 安定して動くのか? 耐久性は確保されているのか? ビズライト・テクノロジーでは、ArduinoやRaspberry Piなどのオープンソースハードウェアのディストリビューターとして、製品化を含めた広い範囲でのサポートが行えます。

 

BHシリーズを搭載したIoT家具「SOUND TABLE」

2つ目の使用実例は、テーブルの天板全体から音が出るIoT家具「SOUND TABLE」です。SOUND TABLEは、家具とITを融合させた新しいプロダクトを生み出していくIoT家具ベンチャーのKAMARQ社が開発した製品。スピーカーが内蔵された天板全体から音が出るだけでなく、天板の側面についた電源とUSB端子により携帯の充電、調理家電の使用が可能です。さらにスマートフォンと専用アプリの連携で好きな曲や、現在地の天候に合った曲を流すことも可能。このSOUND TABLEのIoTゲートウェイとしてBHシリーズが採用されています。

SOUND TABLEへのBHシリーズの採用は、KAMARQからビズライトへ検討の依頼が直接入りました。KAMARQでは、オーディオの機能に加え、インターネットや機器類と通信が行えるもので、低価格かつ小サイズのものを検討した結果、Raspberry Piに注目します。しかし、Raspberry Piで希望の機能を満たせても、実際に製品に搭載するためには各種の機能の追加変更や信頼性のテストが必要でした。そこで、Raspberry Piが扱えて、ハードのカスタマイズや信頼性も確保できる会社を探した結果、ビズライト・テクノロジーに辿り着きます。

これに対し、ビズライト・テクノロジーでは、BHシリーズにオーディオ機能を追加して、耐環境試験を実施。製品への採用が直ちに決まります。一度に何千台も製造するような製品でなければ、新たにすべてを設計することは時間やコストの面から困難です。しかし、オープンソースハードウェアを用いれば、設計にかかる時間やコストを減らせて、少ない数の生産にも対応できます。さらにオープンソースハードウェアに対する信頼性の不安は、ビズライト・テクノロジーが技術と経験で解消します。

 

BHシリーズを用いたデジタルサイネージ

3つ目の使用実例は、BHシリーズをIoTゲートウェイとして用いたデジタルサイネージです。写真や動画が次々と映し出されるデジタルサイネージでは、映像やネットワークの制御のために従来では小型のPCが用いられていました。小型とはいえ通常のPCと変わらず、設置には場所をとり、天井から吊り下げられるようなデジタルサイネージの場合、天井内に配線をして別室に置くといった工事が必要です。

また、通常のPCなので屋外での使用は想定していないため、日差しや雨による高温、高湿に耐えることができません。しかし、BHシリーズならば場所を取らず、無線での通信も可能なので追加の配線が要らず後からでも取り付けることが可能です。各種の耐環境試験を繰り返し、対策も施されているので安定して使用できます。

BHシリーズを搭載したデジタルサイネージは、すでに現場で数多く使用されています。例えば、千葉県の大型商業施設、セブンパークアリオ柏では50台以上のBHシリーズを搭載したデジタルサイネージが2016年の開業当初から連続で稼働しています。東京銀座のマロニエゲートで稼働しているデジタルサイネージもBHシリーズが搭載されています。ほかにも数多くの実績があり、BHシリーズの堅牢性、安定性を証明しています。

開発の検討から製品化まで幅広いサポート

このように、ビズライト・テクノロジーではArduinoやRaspberry Piなどのオープンソースハードウェアを用いた開発において、ハード、ソフトの両方の面で持つ多くの経験と技術により開発をサポートします。お気軽にご相談ください。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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