IoTにおける低電力化とエネルギーハーベスティングの可能性

各種のセンサーやモータなどの駆動装置、データを処理するプロセッサや通信機器など、IoTにかかるデバイスでは、その動作に必ず電力を必要とします。ひとつひとつの電力消費は小さい物ですが、その数が数百億となれば莫大な電力が必要となります。また、数が増えれば個々のデバイスまでどのように電力を供給するのかも問題となります。そこで今回は、IoTの電力供給の問題について株式会社ビズライト・テクノロジー代表取締役社長・田中博見氏にお聞きします。

IoT導入の足を引っ張るワイヤリング問題

「ワイヤリングのコストはかなり高い。IoT導入の足を引っ張るのはワイヤリングコストかもしれない」……このように、電力供給問題を考えるにあたり田中氏はまず配線の問題を挙げます。

IoTではさまざまなモノをインターネットにつなげます。もし、モノに取り付けられたIoTデバイスへ有線で電力を供給する場合は、なんらかの電源からIoTデバイスまで電源ケーブルを引かなければなりません。また、電力だけでなく、末端のデバイスとゲートウェイ間やゲートウェイとクラウド間でのデータのやり取りを有線でやるとするならば、その配線も必要になります。同じ部屋内や手の届く位置での配線で容易に行えるならば問題はありませんが、穴の開けられない壁のある場所や何百メートルも離れているような場所との間で配線をするとなると不可能なこともあります。

データのやり取りに関しては、Wi-Fi、3G、サブギガ帯などさまざまな無線技術があるので、それを使えば問題は解決されます。しかし、電力の場合は現状無線での電力供給は難しく、配線をしない場合はバッテリーを使用して電力供給をすることになります。バッテリーでの電力供給の場合、極めて電力消費の少ないデバイスならば小さなバッテリーで何年も使用できますが、多くの通信を行うようなデバイスでは消費電力も大きく、頻繁にバッテリーを交換する必要が出てくるので実用に耐えられません。田中氏は「どうやってデータと給電をワイヤレスでいくのかが今後のIoTのキーワードとなる。どうやって線を引っ張るのか? 電池はどうするのか? データも無線にするのかどうか? こういったことが問題になる」と指摘します。

電力供給問題を解決するエネルギーハーベスティングとは

このようなIoTデバイスへの電力供給問題を解決するひとつの方法として、エネルギーハーベスティングの技術が注目されています。エネルギーハーベスティングとは、光や熱・振動といった周囲の微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して、電力に変換して使用する技術のこと。この技術をIoTデバイスへ使うことにより、デバイスの近くで発電できるので長い配線や充電・電池交換などが不要となります。

具体的な例としては、光を使った発電ではソーラーパネルがすでに広く普及しています。最近では透明タイプのソーラーパネルも開発され、窓ガラスに取り付けることで視界を遮ることなく発電を行うことも可能になりました。より変換効率の高いソーラーパネルも開発されており、室内の照明程度でIoTデバイスの使用に十分な発電量を得られる物も出てきています。熱を使った発電では、体に装着して体温で発電することで小型の機器を動作させる装置が開発され、モータや電子機器が大量に組み込まれた装置から発する熱を利用した発電装置も開発が進んでいます。

振動による発電も、実証実験が各種行われています。2006年から2008年にかけて、東京駅の改札に設けられた床発電システムによる実証実験(人が歩くことで床に伝わる振動エネルギーを、床に組み込んだ圧電素子によって電力に変える実験)が行われ、最大で1日あたり940KWsの発電量が得られたとされています。同様の実験では、高速道路の路面に埋め込んだ圧電素子での発電実験も行われていますし、歩行時の振動でスマートフォン向けのバッテリーに充電を行う装置が製品化されています。少しずつではありますが、エネルギーハーベスティングの技術は実用化に向かっているのです。

「家庭用の見守りサービスなどは絶対にエネルギーハーベスティングでやるべきだ。ドアの蝶番にコイルを付けて、開閉で発電することでセンサーを起動して信号を送るだけでいい。お茶は飲まないかもしれないが、生活していればトイレのドアは必ず開ける。そのうちIoT 対応ドア用蝶番なんてものが発売されて、自分で取り換えて設定すれば簡単に見守りサービスが実現できるという日がくるかもしれない」(田中氏)

IoTデバイスへの電力供給問題の解決とともに、エネルギーハーベスティングがより身近な物になっていくことが予想されます。

エネルギーハーベスティングと低電力化の必要性

田中氏は「デバイスの低電力化はエネルギーハーベスティングでも電池動作でも問題になる。少ない電力の方が長く使えるから。今よりもさらに低電力化すれば、原理的にはエネルギーハーベスティングでの動作なら無限に動き続けるということになる。電池であっても、10年、20年と動くならば、装置の劣化を考えたら壊れるまで動き続けるということになる。使う側が少なくなるのと、供給する側が大きくなるのとは同じ問題」と、エネルギーハーベスティング技術が今後重要になるとともに、低電力化は今後も問題になってくると指摘します。

株式会社ビズライト・テクノロジーのIoTゲートウェイBHシリーズに搭載されたRaspberry Piは、通常のPCに比べて遥かに消費電力は小さくなっています(デスクトップPCの消費電力はおよそ50~150W、ノートPCで20~30W、Raspberry Piは1~数W程度とされている)。それでも、現状エネルギーハーベスティングで連続的に動作させることは困難です。IoTの普及には、データとともに電力もワイヤレスで供給できる環境が不可欠となります。そのためには、さらなる低消費電力化と、高性能の電池やエネルギーハーベスティングでの給電量の増大が必要になります。田中氏は「いずれは街自体がパワーグリットでお互いが発電給電するようになる。IoTのデバイスも1つでなんでもやろうとすると消費電力が大きくなる。どんどん細分化されていくだろう」と予想します。

株式会社ビズライト・テクノロジーはBHシリーズに加え、Arduino互換のIoT向けマイコンボードBiZduinoを提供しています。BiZduinoは、Raspberry Piを搭載したBHシリーズよりもさらに少ない電力で稼働し、無線での通信も可能です。田中氏は「ビズライト・テクノロジーでは、お客様のビジネスモデルに合わせてBHシリーズ、BiZduinoを組み合わせ、ワイヤリングや電力消費も含めた最適な使い方を提案できる」と語ります。ビズライト・テクノロジーは、IoTの電力供給問題に関しても今後さまざまな取り組みを進めていきます。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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