使用事例からみるArduinoの可能性

オープンソースハードウエアのワンボードマイコンであるArduino(アルディーノ)。このArduinoは、学生が簡単に手に取って使える教育用の安価なマイコンボードとして開発されました。近年、教育用でありながらハイエンドな能力を備え、自由度の高さもあって、IoTのキーパーツとして高い注目を集めています。

Arduinoでどのようなことができるのか、使用実例を紹介するとともに、株式会社ビズライト・テクノロジーが開発、生産するArduino互換のIoT向けボード「BiZduino」が今後どのような分野での利用が進んでいくか、同社代表取締役社長・田中博見氏にお聞きします。

オープンソースハードウエアによるスピーディでフレキシブルな開発

Arduinoは2005年にイタリアで開発されました。Atmel AVRマイクロコントローラと各種入出力ポートを備え、C言語を元としたプログラム言語による統合開発環境(IDE)が無償で用意されています。オープンソースハードウエアなので、回路図や基板図が公開されていて誰でもArduinoを作ることができるだけでなく、互換製品を開発することも可能です。産業用にも使える能力を備えているだけでなく、世界中の人と開発情報を共有することもできるのです。

このArduinoのテクノロジーを使い、ビズライト・テクノロジーが開発に協力した製品に、株式会社QUANTUMのIoTアンビエントサイネージ「kizuki.」があります。kizuki.はインターネットに上がる天気情報を元に、現在地の最高気温と最低気温、現時点と12時間後までの天気予報を、LEDの光り方により伝えます。インターネット上の天気情報はWi-Fiを経由して通信を行い取得。データに合わせて所定のLEDを発光させています。Arduinoベースでハードが設計され、ソフトまで含めて3週間程度でプロトタイプが開発されました。そこから製品化も素早く行われています。この流れは、オープンソースハードウエアにより、短期間で開発が行われた一例です。

このほか、BiZduinoの導入例として、工場に設置された機械への制御、監視システムの追加事例があります。個々の機械と、機械を集中的に制御する制御装置間では既にローカルなネットワークで接続されていました。しかし、機械の起動や停止、駆動速度の調整、異常停止を検知する程度の制御しかできないものであって、駆動速度の最適状態の確認は人の手で行われていたのです。

これに対し、回転状況や電圧値の変化などを計測するセンサを備えたBiZduinoを各機械に設置。Raspberry Pi搭載IoTゲートウェイのBHを制御装置側に設置して、BiZduinoからの情報を無線でBHに収集、処理。制御装置に最適な駆動速度を指示するとともに、駆動状態のログをサーバに上げることでメンテナンスの手助けを行うシステムが構築されました。こちらは、コストをかけずに、後付で簡単にIoTによるシステムを構築した例です。同様のシステムはビルの空調管理などへの応用も期待されています。また、ホームセキュリティやスマートハウスなどの一般家庭での使用にも期待されていて、エンターテイメント分野では早くから利用が進んでいます。

このように、オープンソースハードウエアであるArduinoと、Arduino互換のBiZduinoは、IoTシステム構築を安価で容易にするためのキーパーツとなります。特にBiZduinoは、Arduinoのみでは産業用用途として足りない部分が解消され、問題なく産業用に使用可能です。例えば、Arduino互換のため、Arduino IDEからプログラムの書き込みが可能であることはもちろん、Wi-Fiモジュールとして技適認証取得済みのESP-WROOM-02を搭載し、802.11 b/g/n(2.4GHz)の無線LANに対応しています。電源部は、USBバスパワーだけでなく5V端子からの電源供給が可能。Wi-Fiモジュールへの給電には専用回路が使われ、バックアップ電池付きRTCも搭載しています。大きさはArduino UNOと同じなので、市販のArduinoシールドもそのまま利用可能です。プロトタイプの開発にも、そのまま実際に装置に組み込むことにも使用できます。

1次産業の仕組みを変えるIoTの技術

次に田中氏に今後どのような分野でBiZduinoが利用される可能性があるか、予測を聞いてみました。田中氏は「例えば人が近づくのが困難な場所の観測作業。到達距離が長く回折性が高いサブギガ帯(Sub-GHz無線)の無線技術を使えば、壁の多い大きな建物の中や、見通しで1km程度離れたところからもデータを収集できるので、BiZduinoのようなデバイスにそれをつけてたくさん置いていけばいい。それを離れた場所のBHで収集してクラウドに上げればビッグデータ解析ができて、災害の予測などもできるようになる。高価な測定器を1台置くよりも、安価なセンサデバイスをたくさん置けば、仮にいくつか壊れてもほかがカバーする。IoTによるビッグデータの解析とはそういうものだ」と言います。火山活動の観測、傾斜地の落石監視、川の水位変化など、24時間常時観測が必要でありながら過酷な自然環境であって、有線での装置の設置が難しい場所では、無線技術を使ったIoTデバイスは力を発揮します。データの取得は複数のBiZduinoで行い、BHでデータを収集・処理・返信・クラウドとのデータの送受信を行う。IoTを使った監視システムが容易に構築できます。

「BiZduinoやBHは、農業関係の1次産業にも大いに活用されるだろう。例えばビニールハウスの温度管理や制御。直接データを3GやLTEでネットに送るようなデバイスを、ビニールハウス内に1個1個置くようなやり方は合わない。BiZduinoのようなものを1個か必要に応じて何個か置く。サブギガ帯でデータを家にあるBHへ飛ばしてそこからクラウドへ送る。明らかに異常な温度変化などが検知されれば、ハウス内にあるBiZduinoが直接扉の開閉の指示を出すとか、警報を鳴らすといった動作ができる。1次産業のIT化にはBiZduinoやBHシリーズのようなデバイスは最適だ」(田中氏)

農業従事者は現在高齢化が進み、作業の省力化が課題の一つとなっています。また、農業の高収益化をめざし、農地を集約することによる大規模化や、農業法人による効率的な運営も各地で行われています。IoTの技術は、そのような農業の新しい動きに大いに役立ちます。今までの技術でもビニールハウスの管理や制御、農地の監視などの防犯面も含めて実行は可能でした。しかし、配線や電源などの設置の問題、高価なIT機器を人のいない農地に放置することの危険性等により実現することは困難でした。それがBiZduinoやBHシリーズのようなデバイスを使えば、無線による通信で容易に設置できて、低コストで実現可能になるのです。生産、加工、流通、販売のすべてを農家が行う農業の6次産業化にはITの技術は不可欠といえます。ビズライト・テクノロジーは、農業のIT化、6次産業化にも貢献します。

語り手

代表アイコン
株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
記事の内容に関する質問、お問い合わせはこちらへ!

著者情報

著者アイコン
馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

関連記事