IoTのキーテクノロジー「センシング技術」の展望……センシング技術を有効に活用するために必要なことは何か

「センシング技術」は、IoTによる世界を実現するために欠かせない技術のひとつです。すでに世の中にはさまざまなセンシング技術を使った機器が数多く出回り、それに触れないで過ごす日はないという状況です。IoTが普及することで、この傾向はさらに強まります。

今回は、そのセンシング技術に関して、IoTやAI技術との関係、有効な活用方法、今後の展望などを株式会社ビズライト・テクノロジー代表取締役社長・田中博見氏にお聞きします。

センシング技術とは……人間の感じるもの、目に見えないものを定量化

そもそも、センシング技術とはどのようなものなのでしょうか? 人間には光や音、温度、加速度などさまざまな変化を感じる器官が備えられています。目や耳、皮膚、舌、鼻といった器官です。これらの器官は、変化には気づきますが、“どのぐらい”変化したのかは定量的にはわかりません。あくまでも個人の感覚として大小、高低がわかる程度です。また、地磁気といった人間には変化を感じるのが難しい変化もあります。センシング技術は、こういった物理的な変化をセンサーで計測し、定量的にとらえる技術のことをいいます。

現在では、光、温度、湿度、重さ、音、地磁気、加速度など数多くの物理変化をセンサーで計測することが可能です。例えば光や重さなどの変化から、人や物の動きを検知することに特化したセンサーがあります。タッチパネル、形状や動きを解析するソフトを備えたカメラなども、大きな意味でセンサーを使ったセンシング技術といえます。

電車では車内に温度を感知するセンサーをつけて空調の調整を行い、車体に重量のセンサーをつけてブレーキの制御に使用しています。カーナビシステムは、かつてはGPSの情報のみを使い位置を表示していましたが、今ではエンジンの回転数を検知するセンサーやGPS以外の電波を検知するなどしてより正確な位置を割り出しています。ほかにも、スマートフォンにはジャイロセンサーや加速度センサーが内蔵され、自分の向いている方向や傾き、動きなどを知ることができます。このように、センシング技術を使った機器は、街や家の中、身に着けるものなど、あらゆるものに取り入れられています。

集めただけでは何も起こらない……集めたデータをいかに解析し利用するか

これに対し、田中氏は「センサー単体では大したことはわかっていない。何かが動いた。どちらの方向を向いている。早く動いているのか、ゆっくり動いているのか。それがわかって何? という程度。何も想像ができない。ところがソフトを絡めると、こういう風に動いているということは歩いているのか、車なのか、電車なのかがわかってくる。センサーにソフトのアルゴリズムを足すと、何をしているのかかなりの確度で想像できるようになる」といいます。

センサーはIoTにおいては末端部分。人間でいえば手先や目、耳などの器官になります。それだけでは「触れた」「光を感じた」「音が聞こえた」だけで、センサーそのものは何も考えていません。センサーで得られたさまざまなデータはクラウドに集められ、解析されることで初めて意味を持ちます。クラウドは人間でいえば脳ともいえる場所。そこでビッグデータをAIで解析することにより、そのデータが何を意味するのか、それに対してどのように反応するのかがわかるようになり、フィードバックができるようになるのです。

かつては、ヒーターのスイッチのように、センサーで感知した温度が一定以上になれば切れ、下がれば着くといった単純な物でした。今では、スマートフォンに内蔵されたセンサーとアプリが連動することで、走る速度や距離を計測し、目的の位置まで来たら知らせたり、最適な走るペースを指示したり、健康管理までするようになりました。IoTの世界では、センシング技術とソフトウェア、AIの技術が融合することで、何を知るかだけではなく、それから何ができるのかを考え自動的に行うように変化しているのです。

「データを取るのはいいが、どう使うかが一番重要。第4次産業革命前は、データを取ってもいなかったのでまずは取るということから。今はそれをどう使うか。何かがわかれば、何かがわかってくるのではないか。思ってもいなかった、全く違う仕組みに使われていたセンサーが使えるかもしれない。センシング技術は、何十年も電池交換なしで使えるとか、より小さいこととか技術的革新はこれからも要求される。しかし、もっとやれることは手前にいっぱいある」(田中氏)

また、「例えば、お客様の動きを知りたいからこのセンサーをつけてみましょうと何かのセンサーをつけて、ビッグデータ、AI解析もせず見ているだけの人はAIに使われる側の人。誰か専属で人を雇って観察させておけばできてしまう。何と何を組み合わせればこれができるのではないかという仮説を立てられるか。ここがセンシングの大きな分かれ目になる」とも田中氏はいいます。これからのIoTに関わるエンジニアは、さまざまなセンシング技術を知っておき、それをどう組み合わせてどう使うかを考えることが重要となってきます。

今後活用が期待されるセンシング技術は何か……BHシリーズの対応

このように多くのセンシング技術があるなか、田中氏は今後伸びてくるセンシング技術に画像処理の技術を挙げます。CPUの性能向上とAI技術の向上は、画像処理による解析を従来よりも格段に早く、容易に行えるようにしました。画像処理解析によるアプローチはこれからのIoTでは、AIと合わせてより一層に進むと考えられます。人の表情や物の不規則な動きなど、温度や明るさのような物理量では計測が難しいものに対して、画像処理解析の技術は有効に働きます。

例えば、現在のデジタルサイネージでは、タッチパネルで触って表示する言語を切り替えています。これが、取り付けられたカメラで撮影した顔の画像をAIで解析することで人種を判別し、音声からも総合的に判断して言語を切り替えることが可能になります。このようなシステムがIoTの技術を用いれば容易に実現できるのです。

センサーの技術革新は日々進み、精度が上がり、より小さく、安くなっています。そして、CPUの性能も向上し、AIによる解析技術も日々向上しています。かつては高性能で高価なカメラや解析ソフトを使用して行っていた高度な画像解析処理も、安く手軽に利用できるセンサーやデバイスを多数使い、ビッグデータやAIを駆使することで容易にできるようになりました。そのシステムの開発においても、莫大なコストがかかるからと躊躇することなく、結果が出るかわからないがまずは実験して確認してみるということができる時代になったのです。

ビズライト・テクノロジーのBHシリーズは、このような要望に応えられるIoTゲートウェイとして、高い拡張性・堅牢性・安定性を備えています。また、画像処理解析においては、BHシリーズのベースとなるRaspberry Piは、画像入力用としてMIPIカメラインターフェース(CSI)を備え、 カメラからの高速データ転送が行えます。これによりリアルタイムでの画像処理解析も可能になります。BHシリーズでは、カメラを使った画像処理解析用のプロダクトを今後注力していきます。

語り手

代表アイコン
株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
記事の内容に関する質問、お問い合わせはこちらへ!

著者情報

著者アイコン
馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

関連記事