Raspberry Pi(ラズベリーパイ)で変わるプロトタイプ開発の方法……オープンソースによるスピーディでフレキシブルな開発

何か新しい機器を作る際、仕様通りに動くのか、必要な性能は満たしているのかなど、プロトタイプを製作して確認を行います。それは、IoTのデバイスでも同じこと。センシング、ネットワーク機能を備え、耐久性も求められる……新しいソリューションでもあるIoTデバイスでは、プロトタイプ開発は必須といえます。

しかし、プロトタイプ開発はいま大きな問題を抱えています。その問題点と解決方法に関して、株式会社ビズライト・テクノロジー代表取締役社長田中博見氏にお聞きします。

小型化、低価格によるプロトタイプ開発の限界

かつて、CPUが8ビットや16ビットが主流だったころ。プロトタイプを製作するとなった場合、汎用基板や各種の部品を購入してハンダ付けを行い製作していました。CPUのクロックスピードも遅かったので、手配線で配線しても暴走するようなことはありません。手作りでプロトタイプを作って動作を確認し、それを元に量産用の基板を設計していたのです。

ところが、IoTデバイスのように、センサー機能やネットを介しての通信機能を備えるとなると、8ビットや16ビットでは足らず、32ビットのCPUが要求されてきます。そうなると、端子の間隔は極小になるばかりか、内部に設けられている場合もあり、手でのハンダ付けは物理的にできません。さらにそこへ別の部品も取り付けるとなると、手作りでのプロトタイプの製作はもはや不可能。ならばと新たにプロトタイプ用の基板を設計して製作しますが、コストが飛躍的に上がります。結果としてコストを下げるために、安く作れる海外へ製作を依頼することとなるのです。

しかし、プロトタイプの製作技術は量産品製作にもつながる技術。プロトタイプの製作を海外に出してしまった結果、もはやメイドインジャパンの基板はなくなってしまいました。田中氏はいいます。「日本が悪いわけではない。構造的にどんどん小さく、安く。結果として手放すことになった。プロトタイプの現場における普遍の問題だ。」

産業用汎用ワンボードマイコンではできない…Raspberry Piによるプロトタイプ開発とは?

このように、プロトタイプを新たに作ることが年々困難になっていきました。作れないとなると、ひと通りの機能を備えた汎用的なワンボードマイコンの要求が高まります。それに何らかのOSを入れてさまざまな機器をつないでいけば、プロトタイプを作ることができるからです。

産業用汎用ワンボードマイコン自体は、8ビットのCPUが主流であったころも存在はしていました。しかし、手作りでもプロトタイプが製作可能だった時代。それほど需要は伸びませんでした。プロトタイプが簡単には製作できなくなった現在では、産業用汎用ワンボードマイコンのシェアが急激に伸びつつあります。少量多品種のものであればそのままリリースすることも可能であって、時代の流れに合致してきたのです。

ところが、産業用汎用マイコンボードはオープンソースハードウエアではありません。何かの動作を確認したいと思っても、情報はほぼどこにもなく、実際につないで確認しなければわかりません。何か新しいものを取り付けようとしても、仕様はブラックボックス化され、メーカーと守秘協定を結ばなければ開示されないという状況です。また、OSも専用のものが使用されていることが多くあります。これでは開発スピードが遅く、実際に使えるか使えないかわかったころには半年や1年先。上手く動かなければそれまでのコストが無駄になり、仮に上手く動いたとしても時代遅れになっている可能性がありました。

このような状況で注目を集めたのがRaspberry Piです。Raspberry Piは小型で低価格でありながら、micro-SDをストレージとしており、オープンソースのOSであるLinuxをはじめ、各種のOSを使用することが可能。CPUのパワーもIoT用デバイスとしては十分に備えています。さらにオープンソースハードウエアであるため、世界中のさまざまな人が使い、その情報を共有しています。何かやろうと思った際にできるかできないかわからない場合でも、世界中にある情報からその可能性を調べることは容易です。多くの企業の開発者はこの特徴に注目し、Raspberry Piでプロトタイプ開発に取り組みます。しかし、ここで新たな問題が生じます。

産業用に耐える拡張性・堅牢性・安定性を備えたBHシリーズ

Raspberry Piは、そもそも教育用に作られたものであるため、産業用に耐えうるさまざまな機能が実装されていません。基板がむき出しの状態で供給されるので、サージ、静電気対策が施されていない。内部電源やクロックを持たず、突然の電源停止によるOSクラッシュの危険性があり、タイマー処理もできない。こういったさまざまな機能の不足から、高い性能を持ちながら産業用としてそのまま使用することはできないと判断されてしまうことが多くありました。

株式会社ビズライト・テクノロジーは、これらの問題の解決策としてRaspberry Pi搭載IoTゲートウェイBHシリーズを提供しています。BHシリーズでは、独自電源回路かRaspberry Piピンヘッダ経由で5Vを安定供給。ボタン電池駆動のRTCを搭載することにより、オフラインでのリアルタイム管理が可能になりました。また、金属筐体によるケーシングとグランド処理により、サージ、静電気耐性がフィールド機器並みに強化、GPIOポートのノイズが数十mVレベルに低減されています。さらに、大容量のコンデンサによる電源断対策が施され、OSを安全にシャットダウンすることができます。Raspberry Piだけでは足りなかった産業用に耐える拡張性・堅牢性・安定性を備えることで、プロトタイプ開発者の希望を叶えるソリューションを提供しているのです。

「プロトタイプならばRaspberry Piでいい。オープンソースでいろいろな情報がありカスタマイズもできる。産業用の汎用基板ではできないことだ。ただ、机の上で作ってみたが結局は裸の基板。そこで産業用としての機能を備えたBHシリーズで差別化して、自分たちが作り上げた技術を盛り込めばよい」……このように田中氏はいいます。物理的に試作自体が難しい時代。ならばコストをかけて基板の設計からやればいいが、そうもいかない。ならばRaspberry Piだが、機能がないし、不具合が多い。BHシリーズは、それらに対する株式会社ビズライト・テクノロジーの答えです。

BHシリーズのこれから…IoTの未来の形

田中氏は、今後さらに産業用・ビジネス用にそのままで対応できるBHシリーズのカスタマイズバージョンや、AIとのやりとりを行うソフトも含めたバージョンのリリースを計画しています。これにより、BHシリーズにより提供されるIoT向けソリューションは大きく拡大していきます。

田中氏はこんな予測をしました。

「現状、AIは頭脳でIoTが神経。しかし、IoTデバイスの性能が上がっていけば、そのうちIoT側でも判断できるようになるだろう。大きな解析処理はAIで行い、その結果をIoT側が受ける。仮にAIから切り離されても、IoT側で切り離される前までの結果を用いて判断・解析していく。各端末で違う環境のデータを集めて成長し、それがAIにつながれるたびに協調してさらに成長していく。そうやってAIが成長していけば、仕様を投げられてそのまま返しているようなエンジニアはいらなくなってくる。クリエイティブな技術者でないと生き残れない。」

IoTやAI技術の成長とともに、エンジニアもより成長が求められているのです。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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