データを集めただけでは何も起きない……ビックデータを有効活用したIoTとAIにより作られる新しい世界

さまざまな分野で導入が進むIoTとAI。その市場も急激に伸びています。しかし、「早く導入しなくてはという気持ちはあるが、いったいそれで何が得られるのかよくわからない」「IoTの機器を使ってお客様の動きを調べなくても、見ていればだいたいわかる……効果がハッキリしないものに新しくコストなんてかけられない」というような、漠然とした理由で導入を躊躇している層が、いまもなお多く存在します。

IoTは、ただそれを導入しても何も起こりません。お客様の体重、身長、性別、人数。今日の天気、気温。どのように移動して売り場に行き、どのようなタイミングで商品を手にとったのか。IoTの機器類からは、そのような膨大なデータが自動的に集まってきます。では、それをどうするのか? IoTを導入する答えはそこにあります。今回は、株式会社ビズライト・テクノロジー代表取締役社長田中博見氏にIoTやAIの動向、導入時に考えておくべき点などをお聞きします。

POSレジから集まる大量の顧客データからできたこと

いまではスーパーはもちろん小型の商店でも見るようになったPOSレジ。バーコードをスキャナーで読み込み、商品の値段が表示され、自動的に合計価格が計算されていきます。POSレジは、サーバーに保存された商品の価格データを呼び出してくるとともに、その商品が何時に、何個売れたのかをサーバーへ送ります。これにより、在庫管理を正しく瞬時に行うことができるようになりました。

また、売れ筋商品や、どの商品がどの時間帯にどのぐらいよく売れるのか、売れてない商品は何であるかといった商品の動きを知ることができるようにもなります。さらに、ポイントサービスを行うお客様カードを作ってもらうことで、カードを使って購入したお客様の性別や年齢、家族構成などの情報も同時に得ることが可能です。このような商品販売データが、大型のスーパーであれば日に何万、何十万と集まってきます。

しかし、膨大なデータは、単に集めただけならばあまり意味を持ちません。「いまこの商品が少ないので追加の発注をかける」「この商品が売れていないので在庫の調整を行う」といった、現状の把握とそれに対する対応だけに留まります。田中氏はいいます。

「ビッグデータの考え方が出てくる前までは、こういったデータは全く解析されていなかった。平均を見る、曜日や月ごとにどのぐらいの売り上げの変化があるのかを集計するレベルだった。そんなことは最後にレジのお金をまとめて、表計算ソフトでも使って計算すればできる程度の話。ごく一部の統計解析のできるチームがいたようなところでなければ、膨大なデータの解析は成功していなかった。」

得られたデータは、その内容を解析することで、なぜこの日にこの商品が売れるのか、なぜこの年代にはこの商品が人気なのかといった相関関係を導き出すことが重要となります。かつてのPOSシステム、ECサイトなどでは、データを集めるだけで解析という部分がほとんどなされていませんでした。

多くのパラメータから未来も予測…AIによる解析の登場

田中氏は「ビッグデータを使う人で効果をいち早く出した人は、『理由はわからないがこうだ』と対応をした人。理由はわからないがこれとこれが一緒。これを買う人はこれを買わない。理由はわからないが、水曜日はお客さんがくる。ビックデータは計算機に何か入れれば何か出てくると幻想を持っていた人が多かったが、仮説を立ててやらなければ何も出てこない。巨大なストレージが必要になっただけ。コストがかかるだけでアウトプットが何も出ない」といいます。何らかの仮説に基づきデータを解析し、その結果をフィードバックする。一見相関関係のない物事でも、多くのデータを合わせていくことで何らかの相関関係が見えてくる。見えてきた関係にいち早く対応することにより、刻々と変わる状況のなかで生まれる好機を逃さなくなるのです。

しかし、膨大なデータのなかにある一見関係性のないもの同士の関係を見出すことは、人の手だけでは大変困難な作業となります。そこで登場してくるのがAI。人工知能による解析です。AIならば、与えられた仮説に基づき、いくつものパラメータのなかから同じような変化を起こしているものを、人間の何倍もの処理速度で探し出していきます。

そして、その変化の規則性も探し出し、次に同じ変化がいつ起こるのかといった未来の予測まで行うようになります。それにより、次にこの商品の売り上げが多くなるのは何日後なのでそれまでに在庫を増やすといった、先を読んだ行動を起こすことが可能になります。AIによる解析で、いま数が少ないから発注するといった、単にデータを集めて現状把握する行動とは全く異なる、未来予測型の行動ができるようになるのです。

わからないデータからはAIも解析できない…より細かいデータをリアルタイムに収集するIoT技術

このように、AIを用いることで未来を予測した解析ができるようになりますが、解析結果が間違っていることも当然あります。そのような場合、間違った結果を加えて再度AIに解析させたり、新たなデータを入れたりすることで解析結果の精度を上げていくことが可能です。

しかし、POSレジのデータでは得られるデータが限定されます。また、お客様カードで情報を入れてもらうとしても、カードを作らないようなお客様の情報は得られませんし、カードのシステムを作るだけでも莫大な費用がかかります。さらに、そのときにどのような人と一緒に来店していたか、店内でどのような動きをしていたかといったような、売り上げやお客様カードからはわからないリアルタイムの情報を得ることもできません。わからないデータはAIに与えることができず、そこから解析することはAIにもできないのです。

そこでIoTデバイスが大きな力を発揮します。例えば、インターネットに接続されたセンサー付きのカメラを設置すれば、お客様の顔の画像から解析して年齢や性別のデータを自動的にサーバーに集められます。そのお客様がどの棚にどれぐらい滞在し、どの商品を一度手にとり、最終的にどの商品を購入したかまで一目瞭然です。また、棚の画像から商品の配置状況もデータとして得られます。

さらに、外や室内の温度や湿度、天候などのデータも同時に取得できます。お客様がアクションを起こさなければ集められなかったあらゆるデータが、自動的に集められるようになるのです。この新たなデータを用いてAIで解析することで、より精度の高い予測が可能となります。

いままでは、在庫のデータベースの残個数がいくつ以下になったので商品を発注するというやり方でした。それがこれからは「次の週は近所でイベントがあり、天候予測は晴れ。このイベントで晴れの場合は、この商品がこの程度の量売れるので、いまのうちにこの個数を発注しよう」といった予測型のやり方になります。IoTによりデータが多く集まれば、AIによるその予測精度は格段に向上し、ビジネスのやり方まで変わってくるのです。

業務システムが変わる…旧態依然のやり方を続ければいずれ消えていく

田中氏は「IoTはインターネットオブシングス。最後の主役はデータをとってどう解析していくか。サーバー側、AIの決断。しかし、手足は必要。手足に張り巡らされる神経がIoT」といいます。データを集めるだけでは何もできません。「IoTを導入したがたいした効果は得られなかった」……そんな声が多くありますが、得られたデータをどう解析し、その結果をどのようにフィードバックしていくか、ここが重要です。

また、田中氏はこうもいいます。

「業務系システムと情報系システムの分離が今後はさらに進む。旧態依然の業務システムの作り方ではスピード感が追いつかない。管理も含めて既存のやり方でいようというのでは、近いうちに消えていくだろう。」

世の中の仕組みが、IoTによっていま大きく変化しつつあります。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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