おもちゃから産業用途へ。なぜ今Raspberry Pi(ラズベリーパイ)なのか?

あらゆるモノがインターネットとつながるIoT。そのなかで今「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」という超小型のコンピュータが注目を集めています。Raspberry Piとはいったいどのような物なのか。何ができるのか。そして、なぜ今Raspberry Piなのか。

株式会社ビズライト・テクノロジーが開発、生産するRaspberry Pi搭載IoTゲートウェイBHシリーズを例に解説するとともに、同社代表取締役社長・田中博見が今後の展望をお話します。

Raspberry Piとはどのような物なのか。

Raspberry Piは、「ワンボードマイコン」と呼ばれる低価格のカードサイズの小型コンピュータ。電源やHDDは備えていませんが、USBポートから電力を供給しmicro-SDをストレージとしてLinuxなどの各種のOSを使用することが可能です。HDMI出力にモニターを接続することで画像も表示され、通常のPCとなんら変わりなく使用できます。CPUの性能としては最新のPCには及びませんが、搭載されたGPIOによりさまざまな機器と接続できるなど、通常のPCにはできないことがいろいろできます。さらに、ハードウェア仕様が公開されているので、世界中の人と開発情報を共有できるなど、柔軟な開発環境も備えています。

Raspberry Piが開発されたのは2012年のこと。コンピュータ開発スキルの向上を促進するために、イギリスで設立された非営利財団「Raspberry Pi Foundation」により子供の教育用として開発されました。同財団の創設者であり、Raspberry Piの開発者でもあるEben Upton氏は、プログラミングが可能、多くのプログラミング言語に対応、子供たちが学校に持っていけるように小型で丈夫かつ教科書と同程度の安価なものなどの要件を定め、Raspberry Piの開発に挑みます。その結果、最初に発売されたRaspberry Piは発売初日に10万台が売れ、大きな話題となります。

このように、Raspberry Piは当初教育用として開発されたものでした。しかし、産業用としての需要も近年大いに高まっています。それに伴い、販売台数は2016年末現在で累計1100万台を突破するなど、わずか5年で驚異的な伸びを見せています。

おもちゃから産業用へ、成長するRaspberry Pi市場

Raspberry Piの販売台数の増大。その背景にはIoTが大きく関わってきます。産業機器では自動化、省力化の流れから以前からネットワークへの接続が進められていました。しかし、機器ごとに専用のボードを使用し、プログラムもバラバラ。各社で独自の技術を使っているため、仕様を聞こうにも企業秘密で聞くこともできませんでした。さらに、機器に取り付けられるデバイスは、機器の小型化とともに同じように小型、精密化していきます。試作品レベルでも、一から開発するのは至難の業となってきました。あらゆるモノがインターネットとつながるIoTにおいては、大きな障壁となります。

そこで注目されたのが、このRaspberry Pi。各種接続ポートを備え、CPUのパワーもIoT用デバイスとしては十分にあります。プログラムが変更可能であって、ハードもソフトもオープンソース。そして低価格であること。多くの企業の開発者はこの特徴に注目し、実際に試作機を作ってテストを行いました。そして、これは使えるとなった時点で問題が生じます。産業用として使用するには各種性能が不足していたのです。

Raspberry Piを産業用として使用する際の障壁

通常、Raspberry Piは電力をUSBから供給しています。PCとして使用しているならばOSを終了させてから電源を取り外す作業を行いますが、産業用として機器に組み込まれた場合は突然電源が落ちる可能性があります。そのたびにOSがクラッシュしてしまう可能性があり、安定性に問題が出ます。また、Raspberry Piは基板のみで外装はなく、静電気などの電気的衝撃を含め堅牢性に欠けます。さらに、RTCを備えていないので、動作ログを取得する必要がある場合や、タイマー動作させる際には時間がわからず内部的には行えません。このような問題から、試作段階では問題なくとも、実際の使用の段階で使用が取りやめられる場合が数多くあります。

問題に対するビズライト・テクノロジーの答え……拡張性、堅牢性、安定性を備えたBHシリーズ

株式会社ビズライト・テクノロジーのRaspberry Pi搭載IoTゲートウェイBHシリーズでは、これらの問題を解決するためのさまざまな機能を搭載しています。

  1. 電源強化:内部にレギュレータを持ち、独自電源回路かRaspberry Piピンヘッダ経由で5Vを安定供給。
  2. ノイズ対策:金属ケースやグランド処理などでGPIOポートのノイズを数十mVレベルに。
  3. ボタン電池駆動のRTCの搭載:オフラインでのリアルタイム管理を可能に。
  4. 金属筐体によるケーシング、グランド処理:サージ、静電気耐性がフィールド機器並みに強化。
  5. 大容量のコンデンサによる電源断対策:外部電源のダウンを割込信号としてGPIOで検出し、安全なシャットダウンを実行。

柔軟な拡張性があり、高い堅牢性と安定性を備え、ネットワークにも対応したBHシリーズの出荷実績は既に2000台以上。例えば、KAMARQのサウンドテーブルという商品にも採用されています。

KAMARQ社は、家具とITを融合させた新しいプロダクトを生み出していくIoT家具ベンチャー。このKAMARQ社のサウンドテーブルはスピーカーが内蔵され、テーブルの天板全体から音が出ます。天板の側面についた電源とUSB端子により携帯などの充電や調理家電などが使用できるだけでなく、スマートフォンに入れた専用アプリと連携することで好きな曲を流すことが可能。スマートフォンから得られる位置情報から、現在位置の天候情報を取得し、天候にあった曲を流すこともできます。まさにIoTの代表例ともいえる商品であるこのサウンドテーブルのIoTゲートウェイとして、BHシリーズが採用されているのです。

今なぜRaspberry Piなのか?

教育用から産業用として注目されはじめたRaspberry Piは、今まで以上に出荷数が伸びると予想されています。通信の世界では今までラストマイルといわれていましたが、IoTではラストセンチ、ラストヤード。より近くをつなぐことが大切になります。

例えば、住宅用の見守りシステムにIoTが導入された場合。単に、電気のスイッチのON、OFFだけでなく、ドアの開閉の動きで発電して開閉を検知するセンサーなど、家の中の至る所にセンサーが取り付けられることになるかもしれません。このデータをサーバーに集めて解析することにより、防犯や遠隔地の親族の安否などを事前に高い精度で予測することが可能となります。そして、センサーが増えればその数に合わせてゲートウェイの数も増加します。このとき、Raspberry Piのような安価で拡張性の高い物があれば、安く簡単にそのような環境が実現できるのです。

将来、家の天井裏にBHシリーズのような箱が何個も取り付けられているようなことになるかもしれません。そのうちIoTが当たり前になり、それがあることを意識しなくなるでしょう。

そのような社会が、そう遠くない未来に実現されているのは間違いありません。

語り手

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株式会社ビズライト・テクノロジー
代表取締役社長 田中 博見
1962年北海道旭川市出身。
大手家電メーカー系の工場でファクトリーオートメーション分野に従事したのち、コンピュータ業界へ。 8ビットから16ビットマイコン時代、ハードウェア設計からファームウェア開発までを経験。 その後はLINUXをベースとしたWEBソリューションに注力すると同時に、IPOを経験すると、 ECサイトの売上向上のためのビッグデータ解析や、BPRなど経営コンサルタント的な活動が増えている。 現在もっとも興味があるのはフィジカルコンピューティング。
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著者情報

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馬場 吉成
webライター。光ファイバー、半導体関連の装置の機械設計や
特許技術者の経験があり、ネットで各種技術を紹介する記事を
多数執筆。他にも日本酒、料理、マラソンなど幅広い分野で
多数の記事を企画、執筆しています。
ライターページ http://by-w.info/

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